中学校教科書における竹島=独島の扱い

半月城

 一般に日本の教科書は各出版社が4年ごとに文部科学省の「学習指導要領書」および「学習指導要領解説書」にしたがい制作し、文部科学省の検定を受ける。検定に合格した後に教科書として販売することができる。

 中学校の場合、検定が2000年度と2004年度に実施された。次回の検定は2008年度に進行中であり、20093月に終了する。検定に合格した教科書は、公立学校の場合、翌年度に日本各地の採択区ごとに教科書が選定される。

 島根県の場合、採択区は松江、出雲、浜田、益田、隠岐の5区に分かれている。各区で選定された教科書は検定の翌々年度から4年間継続して使用される。私立学校の場合は教科書を自由に選定できる。教科書検定の日程は下記の表のとおりである。

 

中学校教科書検定日程

 

 

2001

02

03

04

05

06

07

08

09年度

中学校

検定

 

 

 

0

 

 

 

0

 

採択

 

 

 

 

0

 

 

 

0

使用開始

 

 

 

 

 

0

 

 

 

 

 社会科の教科書は分野別に公民と歴史・地理に分けられる。この中で竹島=独島に関係する教科書は「公民」8種類、「地理」6種類、「地図」2種類で合計16種類である。その内、竹島=独島を日本領に記述しているのは「公民」4種類、「地理」2種類、「地図」2種類で全体16種類中、8種類であり、ちょうど半数になる。出版社でいうと8社の内、5社が竹島=独島を日本領として記述している。

 

1.「公民」教科書

              公民教科書は8社中、4社が竹島=独島を日本領として記述している。発行された教科書の冊数比率でいうと80.8%になる。

 

「公民」教科書、 採択数:1,232,000

会社

略称

独島

日本領

占有率

(%)

   教科書名

東書

609

新編 新しい社会 公民

大書

136

中学社会 公民的分野

教出

121

中学社会 公民 ともに生きる

帝国

61

社会科 中学生の公民 地球市民をめざして 初訂版

清水

38

新中学校公民 改訂版 日本の社会と世界 

日文

15

中学生の社会科・公民 現代の社会

日新

18

わたしたちの中学社会 公民的分野

扶桑社

02

中学社会 新訂版 新しい公民教科書

 

集計

80.8

 

              ○:日本領、 △:所属不明、 ―:記述無

 

  下記で下線を付した会社は竹島=独島を日本領として記述している。

 

(1) 東京書籍 「日本の領海と経済水域」図に竹島の名前を明記、説明文「竹島と尖閣諸島 島根県隠岐諸島の北西に位置する竹島、沖縄県先島諸島の北方に位置する尖閣諸島は、いずれも日本固有の領土です(P155)

 

(2) 大阪書籍 「日本の領海と経済水域」図に「竹島」の名前を明記(P159)

本文「定まらない領土と国境 周囲を海に囲まれた島国である日本には、国境をめぐる問題があります。・・・島根県沖の竹島は、韓国もその領有を主張しています。・・・国境線は、隣接する国々の大きな関心事であり、実際の利害もからみます。特に、経済水域の設定で小さな島一つの領有も重要になりました。北方領土、竹島、尖閣諸島周辺も、水産資源や鉱物資源が豊富で、注目されています(P159)」。

(3) 教育出版 記述なし

(4) 清水書院 記述なし

(5) 帝国書院 「日本の排他的経済水域(P152)」図に「竹島」を明記

(6) 日本文教出版 記述なし

(7) 扶桑社 巻頭画報の写真説明

「わが国固有の領土であるが、(下)中国が領有を主張している尖閣諸島、及び(最下)韓国が不法占拠している竹島(P3)

「日本の主権範囲(P128)」図に「竹島」明記

「わが国も近隣諸国との間で領土問題を抱えている。国後島、択捉島、色丹島、歯舞諸島の北方領土、日本海上の竹島、東シナ海上の尖閣諸島については、それぞれロシア、韓国、中国がその領有を主張し、一部を支配しているが、これらの領土は歴史的にも国際法上もわが国の固有の領土である(P128)

「日本の主権範囲(P128)」図に「竹島」明記

(8) 日本書籍新社 記述なし

 

2. 「地理」教科書

       6社中、2社が「竹島」を記述。残り4社は排他的経済水域図にて独島海域を日本領とする。

 

「地理」教科書、 採択冊数:1,250000

会社

略称

独島

日本領

占有率

(%)

   教科書名

東書

43.0

新編 新しい社会 地理

大書

34.3

中学社会 地理的分野

帝国

34.3

社会科 中学生の地理 世界のなかの日本 初訂版

教出

9.7

中学社会 地理 地域にまなぶ

日新

2.6

わたしたちの中学社会 地理的分野

日文

0.4

中学生の社会科・地理 世界と日本の国土

 

集計

36.9

 

○:日本領、 △:所属不明、 ―:記述無

 

(1) 東京書籍 竹島の名称なし。排他的経済水域図に独島を含める(P34)

(2) 大阪書籍 竹島の名称なし。排他的経済水域図に独島を含める(P28)

(3) 教育出版 竹島の名称なし。排他的経済水域図に独島を含める(P32)

(4) 日本文教出版 竹島の名称なし。排他的経済水域図に独島を含める(P41)

(5) 帝国書院 「東西南北の はし 以外にも、日本には竹島や尖閣諸島などの離島があります(P30)」。排他的経済水域図に独島を含める(P30)

(6) 日本書籍新社 「竹島周辺(P43)」図や「日本の範囲と海流(P42)」図に暫定漁業水域や「竹島」を明記。

         「日本と韓国の間には、日本海の竹島(韓国名・独島(ドクト))をめぐる問題がある。日本政府は韓国政府と交渉し、竹島周辺の水域は、とりあえず両国で共同管理する暫定漁業水域とした新しい漁業協定を結んだ(P43)

 

3.「地図」教科書

              2社すべてが「竹島」記述。  

 

「地図」教科書、採択冊数:1,252,000

会社

略称

独島

日本領

占有率

(%)

   教科書名

帝国

941

新編 中学校社会科地図 初訂版

東書

59

新編 新しい社会科地図

 

集計

100

 

 

(1)東京書籍 「東アジア(P14)」図に「竹島」    

(2)帝国書院 「東アジア(P20)」図に「竹島」

 

 

4.「歴史」教科書

 

 「歴史」教科書は世界と日本史を1冊にまとめているので、竹島=独島問題を記述する余裕はない。そのため、右翼の扶桑社の教科書すら竹島=独島を記述していない。ところが、例外的に帝国書院の教科書が地図「日本の戦後の国境」で竹島=独島を取り上げているが、所属については何も述べていない。

 

「歴史」教科書、採択冊数:1,248,000

会社

略称

独島

日本領

占有率

(%)

   教科書名

東書

512

新編 新しい社会 歴史

大書

154

中学社会 歴史的分野

帝国

142

社会科 中学生の歴史 日本の歩みと世界の動き 初訂版

教出

118

中学社会 歴史 未来をみつめて

清水

24

新中学校歴史 改訂版 日本の歴史と世界

日新

31

わたしたちの中学社会 歴史的分野

日文

14

中学生の社会科・歴史 日本の歩みと世界

扶桑社

04

中学社会 改訂版 新しい歴史教科書

 

集計

0

 

 

 

結論

 

以上の結果を表やグラフにまとめると下記のようになる。

 

          中学教科書における竹島=独島の記述

 

竹島=独島日本領

全種類数

備考

教科

種類数

採択数比(%)

種類比(%)

 

 

地図

2

100

100

2

 

地理

2

37

33.3

6

 

公民

4

80.8

50

8

 

全体

8

87.9

50

16

()

 

(); 竹島=独島を日本領として生徒が習う比率は下記の計算式による。     87.9% = 80.8 + (100 - 80.8) * (34.3+2.6)/100