竹島=独島問題ネットニュース、45

2021.5.5

竹島=独島問題研究ネット

http://www.kr-jp.net

 

 最近、やや研究が出つくした感があり、ニュースの題材が少なくなりました。新たな研究テーマ探しが困難になったためか、島根県竹島問題研究会は解散になりました。これまで座長を務めた下條正男は拓殖大学を退職し、4月から島根県立大客員教授になりました。

 

記事一覧

1.【書籍】野中健一『竹島をめぐる韓国の海洋政策』

2.【書籍】竹島問題研究会『第4期「竹島問題に関する調査研究」最終報告書』

1)瀬脇寿人(手塚律蔵)と彼をめぐる人たち(石橋智紀)

2)羊頭狗肉、東北アジア歴史財団編『日本の偽りの主張「独島の真実」』について(下條正男)

3)大谷家文書「乍恐申上候口上之覚」-“両島渡海禁制”に関連して(塚本孝)

4)竹島漁労と1970年代の竹島問題(藤井賢二)

5)「内政」化する日韓の「外交」(永島広紀)

6)地理的近接性に基づく領域権原取得の可能性(中野徹也)

7)松島開拓願を出した下村輪八郎と『西海新聞』「松島日記」(松澤幹治)

3.【論文】朴炳渉「2000年以降の竹島/独島に関する日本学界の歴史学研究」

4.【論文】権純哲「「竹島問題」という問題」『埼玉大学紀要 教養学部』

 

記事詳細

1.【書籍】野中健一『竹島をめぐる韓国の海洋政策』成山堂書店、2021

 第1章 竹島近海の日韓EEZ境界

 第2章 海洋警察庁による竹島警備

 第3章 海洋科学技術院と水産科学院による調査活動

 第4章 竹島(総合)海洋科学基地

 第5章 海洋調査問題の再燃

 第6章 本書の研究方法

 終章

  キーワード:@領海、A韓国水域、B海洋科学調査、C海洋科学基地

 第1章から第4章までの4つテーマを確認したとき、韓国の海洋当局/外交当局による対日アプローチの方向性が見えてくるだろう。彼等の不満の源泉は「竹島の日」、「教科書」、「日本による海洋調査企図」そして「日本からの調査妨害」等、多々ある。そして、その対抗措置には、一定の方向性があるのである。彼等が守ろうとしたのは、竹島[独島]周辺海域における法秩序である。竹島が韓国領であることを前提とした秩序、いわば韓国の国内法および同国政府が解釈するところの国連海洋法条約が適用される空問を守ることに必死なのである。ただ、これはときとして韓国側にある種の負担をも加えていることを見逃してはなるまい。

 海洋科学基地問題で見て取れるように、国際司法を恐れるあまり省庁間対立を招来したりしたのだった。そして竹島が「島」か「岩」かで揉めるわけであり、また公船拿捕をめぐっても従来の立場と距離をとるような見解を提示するのである。このように彼等の秩序はその時々により、自らが設定する国益にあわせて変化するのだが、それはそれで新たな秩序の誕生でもある。彼等はときに頑なに法秩序を守り、そしてときとして柔軟に新たな法秩序を作り出したのだった・・・

 ここで確認しておくべきは、海洋当局、外交当局がとってきた各種政策の意味であろう。これは彼等による対日メッセージである。日本側の行動に対しいかなる不満を抱いたか、そしてそれへの対抗措置として何をするか。これはまさしく日本への訴えなのである。そして、その不満等を内包したまま、彼等は韓国国内法や自国政府の条約解釈により塗り固められた法秩序(竹島周辺海域における法秩序)を一層、日本から守ろうとするのである。海上法執行機関や海洋調査機関はその手段であるにすぎない。結局、韓国側の行動を理解するためには、彼等が自国の国内法、条約解釈等を竹島周辺海域にどのように適用しようとしているのかまで検討する必要がある。そして、そうしてこそ同国の海洋当局、外交当局が竹島周辺海域をめぐって抱えている不満や対処がより明確に見えてくるようになるのである。

PW必要】 http://www.kr-jp.net/member/book/nonaka-2101.pdf

 

 

2.【書籍】竹島問題研究会『第4期「竹島問題に関する調査研究」最終報告書』島根県、2020

 研究レポート7編のうち、半数近くが竹島=独島と直接の関連がないか、過去の論文の焼き直しです。

https://www.pref.shimane.lg.jp/admin/pref/takeshima/web-takeshima/takeshima04/kenkyuukai_houkokusho/final_report4.html

 

1)瀬脇寿人(手塚律蔵)と彼をめぐる人たち(石橋智紀)

  ウラジオストック貿易事務官である瀬脇は竹島(欝陵島)を松島と誤解し、1876年に斉藤七郎兵衛の竹島(欝陵島)開拓願を外務省へ取り次いだ。この一件は竹島=独島と直接の関連はない。

 

2)羊頭狗肉、東北アジア歴史財団編『日本の偽りの主張「独島の真実」』について(下條正男)

  下條が10年前にインターネットで発表した「韓国が知らない10の独島の虚偽」の改訂版。

 

3)大谷家文書「乍恐申上候口上之覚」-“両島渡海禁制”に関連して(塚本孝)

 この論文は元禄竹島渡海禁止令が松島(独島)への渡海禁止を含むかどうかに関する、塚本−池内論争の一貫。1740年、寺社奉行が大谷勝房に「[元禄期に]竹島・松島両島渡海禁制が命じられて以後は、鳥取藩米子家老から扶持でも与えられてきたのか」と尋ねたので、寺社奉行は元禄竹島渡海禁止令を竹島(欝陵島)・松島(独島)渡海禁止と解釈していたと池内敏は主張した。これに対して塚本孝は、寺社奉行は単に大谷家の嘆願書を引用しただけであり、竹島・松島両島渡海禁制が寺社奉行の認識であったとはいえないと反論した。池内は大谷家の嘆願書を調べ、そこにはそのような文言はないと反駁した。

 塚本は池内の反駁に直接反論せず、「奉行所は、由緒の裏付けのため過去の将軍拝謁の記録を繰ったこと以外、特に独自の情報を用いたわけではなく、大谷九右衛門勝房が提出した資料に依拠したように見える。竹嶋松嶋両嶋渡海禁制が幕府の認識を示すのか、史実として松嶋への渡海が禁じられたのか、なお検討の余地があるように思われる」と記した。論争の詳細は下記3、朴炳渉論文。

 

4)竹島漁労と1970年代の竹島問題(藤井賢二)

 領海12海里、200海里のEEZが施行された1970年代の竹島=独島問題。藤井は、これまでに資料収集や論文にて重要な「太政官指令」を無視するなど資料の取捨選択がみられるが、今回、先行研究である下記の、朴炳渉「竹島=独島漁業の歴史と誤解(2)」には言及がない。

http://www.kr-jp.net/ronbun/park/parkBS-1110.pdf

 

5)「内政」化する日韓の「外交」(永島広紀)

   一公文書の往来状況に見る統監府「保護」下の大韓帝国−

 統監府「通信監理局」が石島の照会を行った背景には果然、何が存するのか。そうした「保護」下の大韓帝国と日本政府(統監府)との交渉の具体的な様相を検証する、というのが論文の主な動機・趣旨のひとつ。結論は、両者間で鬱陵島なり竹島(独島)が取り沙汰された形跡はない、さらなる資料の蒐集を期したいと、期待はずれ。なお、永島への反論は下記の李ソンファン論文、「日本の独島編入と韓国の抗議不存在に関する検討−永島広紀「‘内政’化する日韓の‘外交’」に対する反論」(韓国語)

http://dokdo.yu.ac.kr/uploads/bbs/bbs_01/29591611036816.pdf

 

6)地理的近接性に基づく領域権原取得の可能性(中野徹也)

  いくつかの条件をみたせば、国際法上、地理的近接性により、領域権原が確立する可能性はある。しかし、竹島=独島の場合は、いずれの条件にもあてはまらない。韓国外交部パンフ「独島は地理的にも韓国の固有領土である」という主張は不適切である。

 

7)松島開拓願を出した下村輪八郎と『西海新聞』「松島日記」(松澤幹治)

  下村は先の斉藤と共同で1878年に竹島(欝陵島)開拓願を瀬脇へ提出したが、この一件も竹島=独島問題と直接の関連はない。

 

 

3.【論文】朴炳渉「2000年以降の竹島/独島に関する日本学界の歴史学研究」『獨島研究』29号、2020

 独島/竹島に関する日本語の論文にて研究者間の論争が熾烈である。特に池内敏と塚本孝との間に熾烈な論争がくり広げられている。両者の見解差は次のとおりである。@17世紀の竹島/独島領有権に関して「最近」の塚本は、日本は歴史的権原を有したとするが、池内は、日本は領有権を放棄したと主張する。A塚本の「松島渡海許可」説について池内は「暴論」と結論づけた。B竹島(欝陵島)渡海禁止令について、塚本は松島(独島)への渡海は禁じられていないとするが、池内は松島渡海禁止が含意されていると主張する。C池内は、1740年代の寺社奉行は竹島・松島両島渡海禁制と認識したと主張するが、塚本は疑問視する。D天保竹島渡海禁止令について、池内は松島への渡航は許されないとするが、塚本は問題ないと主張する。E1877年太政官指令にいう竹島外一島の比定について、池内は竹島(欝陵島)と松島(独島)とするが、「最近」の塚本は竹島も外一島も欝陵島の可能性が高いと主張する。F1900年勅令第41号の石島の比定について「最近」の池内は独島だろうとするが、「最近」の塚本はこれを独島とするのは韓国政府の解釈にすぎないと主張する。

 この池内−塚本論争にて池内の論証は不充分なときもあったが、それを朴炳渉が補完した。池内の塚本批判に対し、塚本の反論は弱く、両者の論争には収束の気配がみえる。一方、両者の見解が一致するのは、サンフランシスコ講和条約によって竹島/独島が日本領に確定したという見解である。これに対して朴炳渉は、同条約は竹島/独島の所属についていかなる解釈もしなかったと主張し、同島は国際法上、ウティ・ポシディティス原則によって、韓国の所属となると主張した。

http://www.kr-jp.net/ronbun/park/park-2012j-jap.pdf

原文(韓国語), http://www.kr-jp.net/ronbun/park/park-2012-jap.pdf

 

 

4.【論文】権純哲「「竹島問題」という問題」『埼玉大学紀要 教養学部』561号、2020

 「竹島問題」は、近年の研究成果によって、理路整然とみえる日本の主張は矛盾を呈した反面、理不尽極まりなくみえた韓国の立場は相当補強された。今なお修正しないままの主張が国民一般に広がり、対立反目は先鋭化している。国際法の問題だ、領土問題だ、歴史問題だという。そのうえ、本稿では、日本の思想問題として取り上げる。「竹島問題」の事象は、時とともに過ぎ去ることもなく、歴史の地層に堆積され、事あるごとに地割れを起し、化石化したはずの過去事が火山灰となりマグマとなり噴出する災害の様子を呈する。日本人が如何に向き合ってきたのか、歴史の地層に散在する出来事に関する近年の研究成果を整理しつつ考察していく。本稿は、埼玉大学で15年間授業中に取り上げてきた「竹島問題」の最終報告である。

https://sucra.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=19127&item_no=1&page_id=26&block_id=52

 

○ 竹島=独島問題ネットニュースのバックナンバーは下記で見られます。

 (半月城通信)http://www.han.org/a/half-moon/mokuji.html#net_news