竹島=独島問題ネットニュース、43

2019.2.12

竹島=独島問題研究ネット

http://www.kr-jp.net

 

記事一覧

1.【論文】 池内敏「日本と韓国の「固有の領土」論」

2.【論文】 朴炳渉「韓日両国の独島/竹島固有領土論の争点」

3.【小冊子】 下條正男『韓国の竹島教育の現状と問題点』

4.【論文】 塚本孝「国際法的見地からみた竹島問題」

5.【書籍】 藤井賢二『竹島問題の起源―戦後日韓海洋紛争史』

6.【論文】 舩杉力修「領土紛争における地図の証拠能力(1)−韓国側の研究を事例として」

7.【論説】 増田都子「外務省(日本政府)の「竹島」主張はフェイク(嘘)だらけ」

8.【集会】 記録および案内

 

 

 記事詳細

1.【論文】池内敏「日本と韓国の「固有の領土」論」

『第1回芳村獨島研究会 国際学術会議 論文集』韓国海洋水産開発院、2018

 

外務省は川上健三の説にしたがって日本は17世紀に竹島=独島に対する領有権を確立したと主張するが、これはまったく成り立たない。元禄竹島(欝陵島)渡海禁令によって松島(独島)への渡海が完全に絶たれたのである。禁令は、文面上には松島(独島)渡海禁止を謳っていないが、内実は松島渡海禁止をも合わせ含む禁令である。これは、1740年代に大谷家が家業保障を求めて江戸幕府と交渉した際の記録中に、幕府寺社奉行側・大谷家側いずれもが元禄竹島渡海禁令を「竹島(欝陵島)・松島(独島)両島渡海禁制」と呼んだ記述を見いだしたことによってさらに明瞭になった。

この記録に関して塚本孝は、寺社奉行が「竹嶋松嶋両嶋渡海禁制」と述べたのは大谷家の請願書を引用したまでであり、幕府側にはそうした認識はなかったという趣旨の反論をおこなった。しかし、大谷家の請願書に「竹嶋松嶋両嶋渡海禁制」という文言はないし、その他の資料から幕府も「竹嶋松嶋両嶋渡海禁制」と理解したことは確実である。結局、江戸時代に中央政府が松島(竹島)を日本領だと言明した史料はひとつも得られない。そうである以上、江戸時代に竹島の領有権は確立していなかった。

一方、韓国の固有領土論が「素朴論」すなわち古くから韓国領であったという論理に立脚する限り、韓国政府の固有領土論は全く成り立たない。原始古代から19世紀後半までに到る歴史資料のなかに、独島が韓国領であることを証明できるものは何ひとつ存在しない(認知していたことが分かる資料は存在するが、認知していたことと領有していたこととは別問題である)。

PW必要 http://www.kr-jp.net/member/ronbun_cl/ikeuchi/ikeuchi-1801-koyu.pdf

 

【コメント】本稿は、崔書勉の号である「芳村」を冠した国際会議にて発表した論文である。会議の副題は「独島研究70年の総括と向後研究方向の模索」。一方、固有領土論に関する別の視点には、次の朴炳渉論文がある。

 

 

2.【論文】 朴炳渉「韓日両国の独島/竹島固有領土論の争点」

『獨島研究』25号、2018

固有領土という語は危険な政治用語なのでむやみに使用するのは好ましくない。特に独島の領有をめぐって対立する韓日両国では、あいまいな固有領土なる語を学問的にきちんと定義して正しく使う必要がある。本稿は固有領土という語の用法や意味を分析し、その定義を試みる。また、その定義にしたがい、韓日両国の固有領土の主張を分析する。

韓国政府が独島を固有領土と主張する根拠は、外交部のパンフレット韓国の美しい島、獨島』および1950年代に日本政府へ送った「韓国政府見解」に示された。これらを検証すると17世紀以前の史料は于山島の位置が曖昧だったり、『太宗実録』のように于山島と欝陵島を混同するなど、領有の根拠が充分でない。その根拠として評価できる史料は18世紀に作成された官撰書『春官志』や『東国文献備考などである。これらの史料は、17世紀末に独島を実見したうえで朝鮮領の芋山島(子山島)は日本でいう松島であると主張した安龍福の証言を受け入れ、独島に対する領有意思を示している。うえの安龍福の領土認識の正しさは日本の公的文書 『元祿覚書』(村上家文書)などでも確認できる。

しかし、芋山(于山)島の位置に関する情報がきちんと伝わらなかったので于山島の所在があいまいになり、19世紀末の欝陵島検察使や住民らは于山島の位置を知らず、于山島は伝説の島になってしまった。一方、19世紀半ば、欝陵島へ入った全羅道漁民らは欝陵島の東方に岩島を発見し、これに石()の島の意味で독섬(toksəm)とか돌섬(tolsəm)と呼び、時にはそこでアシカ猟をおこなった。この島が1900年大韓帝国勅令第41号に石島の表記で記録された。この表記は独島と変わったが、大韓帝国が独島に領有意思をもっていたことは沈興沢報告書などから明らかである。

一方、日本が竹島(独島)を固有領土と主張する根拠は外務省のパンフレット『竹島問題10のポイント』にはなく、1953-1962年に韓国政府へ送った「日本政府見解」にのみ示された。この見解書は固有領土の根拠として12の史料を示したが、この中に日本が松島(独島)に領有意思をもつことを示す史料はひとつもない。このことは先の外務省パンフレットが12の史料をひとつも引用しなかった事実からも推測できる。結局、1905年以前に朝鮮・大韓帝国のみが独島に対して領有意思をもったので独島は韓国の固有領土と主張できる。

www.kr-jp.net/ronbun/park/park-1812j-koyu.pdf

 

 

3.【小冊子】下條正男『韓国の竹島教育の現状と問題点』

第4期竹島問題研究会、2018

 第1節序論/第2節『三国史記』と『東国文献備考』

 第3節『東国文献備考』と申景濬の『疆界誌』

 第4節『世宗実録』「地理志」と『八道総図』の于山島

 第5節 林子平の『三国通覧輿地路程全図』と長久保赤水の『改正日本輿地路程全図』

 第6節 太政官指令と「竹島他一島」

 第7節「勅令41号」の石島について/結語

2017年度版の高校生用『独島を正しく知る』は、「東北アジア歴史財団」の下部組織である独島研究所のサイトに掲載されており、誰でも閲覧ができる。その章立ては、「昔の記録に現われた独島」、「日本も認めた朝鮮時代の独島」、「古地図の中で探す我が領土独島」、「近代の独島と日本の独島侵奪」等、10章で構成され、その分量は86頁に及ぶ。

韓国側の独島教育の目的は、竹島を日本領とする教育を受けた日本人に対して、独島(竹島)が韓国領であることを説明することにある。そのため副教材の『独島を正しく知る』以外にも、生徒達を指導するための『教授・学習課程案及び学習誌』と東北アジア歴史財団編の『わが領土独島と出会う』が開発されていた。

PW必要 http://www.kr-jp.net/member/ronbun_cl/shimojou/shimo-1811-Ktext.pdf

 

【コメント】 下條によれば、本書は領土議連の東京大会(2018.11.21)にて配付されたが、「国会議員の先生方は、小冊子などには関心がなかったのであろう。その後、誰からも問い合わせはなかった。私としては、15分ほどの現状報告で、韓国側の実態を説明し、「日本側の対応には問題がある」と指摘したつもりだった。しかし会場は、なぜか式典然とした雰囲気になっていた」とのこと。

内容はこれまでの主張を繰り返すものであるが、1877年太政官の「竹島外一島」に関する指令に関し、またもや見解を少し変えたようである。今回は「当時、外来の地図及び海図」には2種類あったが、太政官が前者のアルゴノートと松島を描いた地図などに依拠して「竹島外一島本邦関係これなし」と判断していたとすれば、「竹島外一島」の一島(松島)は欝陵島のこととなると記した。前回までは断定的な口調であったが、今回は珍しく仮定的な口調である。なお、下條の前近代に関する見解の是非については前記の朴論文を参照されたし。

 

 

4.【論文】 塚本孝「国際法的見地からみた竹島問題」

『不条理とたたかう』拓殖大学、2017

第1節「序論」/第2節「日韓両国政府の主張」/第3節「歴史的な領有根拠に対する法的検討」/第4節「明治維新以降の展開に関する議論」/第5節「終戦後の経過・平和条約をめぐる議論」/結語

日本は、竹島に対し17世紀における日本人の官許を得た活動を通して歴史的権原を有していたが、それを1905年以降実効的占有に基づく近代国際法上の権原によって補強・置換したこと、他方、韓国には竹島に対する歴史的権原がないこと(19世紀以前には実地の知見もない)、1906年の時点で同島を「独島」と称して領有意思を持っていたことが記録上認められるものの国際法上の領土取得要件に照らし領有権が成立していないこと、第二次世界大戦の結果としてのサンフランシスコ平和条約において竹島の日本保持が最終的に確認されたことが明らかである。

PW必要 http://www.kr-jp.net/member/ronbun_cl/tsukamoto/tsukamoto-1708.pdf

 

【コメント】 塚本は、池内敏『竹島―もうひとつの日韓関係史』にて、「空疎な史料解釈で外務省見解の穴埋め」をしているとか、「曲解を繰り返す人たち」、「塚本は自らの論証過程を「史料を総合的に検討」したものと述べるが、その実は、史料の恣意的な切り取り、継ぎはぎによって正反対の結論を導いてみせたにすぎない。こうした「論証」は学問的な営為ではない」などと厳しく批判されていた。この批判から約20か月後に本書が出版されたが、池内への反論はまったくみられない。逆に批判を一部取り入れたのか、太政官の「竹島外一島」指令に関し、かつては「外一島」も欝陵島であるとする有力な根拠とした大屋兼助の「松島開墾願」に本書はまったくふれていない。これ以外はかつての主張の繰りかえしである。当面、塚本は池内への反論を放棄したようである。

 

 

5.【書籍】 藤井賢二『竹島問題の起源―戦後日韓海洋紛争史』

 ミネルバ書房、2018

1953年夏、何が起こったのか。領土問題漁業問題の複雑な錯綜を解き、戦後日本のあり方を問い直し、竹島問題をゼロ地点に戻す。第T部は「日韓会談と漁業問題」、第U部の第7章「竹島問題における韓国の主張の形成」では,韓国人の竹島問題に対する意識がなぜかくも熱情的なのか解明するために韓国の主張の形成過程を検討する。 1948年の建国前後に韓国が竹島を意識しはしめた時には見られなかった,竹島が日韓併合の過程において日本の侵略によって最初に奪われた領土であるという主張への韓国人の共感が竹島問題を考える際には重要であること,しかしそれは韓国による竹島不法占拠が強行される195354年に人為的に作られた認識である

第8章「韓国の海洋認識」は,1948年の建国以来,韓国が竹島および人工島であるイオ島問題をどのように認識してきたかを実証的に明らかにする。日韓会談漁業委員会で韓国がより強く関心を持った海域は,日本海の竹島ではなく東シナ海のイオ島の周辺水域であった。そしてここで浮かび上がる韓国の海洋認識には,領土問題と漁業問題の混同が見られる。

第9章「山陰の漁業者と韓国」は,韓国による日本漁船拿捕の対象となった島根県と鳥取県の沖合底曳網漁業(機船底曳網漁業の一種)を題材としたものである。島根県は機船底曳網漁業の発祥の地であり,島根県の漁業者は県の内外でこの漁業に従事し,日本海から東シナ海・黄海にかけて活動した。島根県と鳥取県の沖合底曳網漁業には差異があり,その違いは竹島問題をはじめとする韓国との関係にも影響している。

10章「竹島問題と日韓関係」 しばしば誤解されるが,竹島周辺海域の漁業は日韓会談の焦点ではなかった。竹島問題は日韓会談の漁業委員会では論議されず, 日韓会談で国際法や歴史的な見地からの論議が行われることもなかった。日韓会談で論議されたのはもっぱら竹島問題の解決方法であり,その解決方法が「紛争の解決に関する交換公文」であった。

11章「竹島問題と漁業」 戦後,島根県の漁業者は韓国と向き合ってきた。 1970年代からその主舞台は東シナ海・黄海から日本海へと移った。1960年代後半からの日本海でのイカ釣漁への従事, 1978年の竹島近海からの締め出し.198090年代の山陰沿岸で操業する韓国漁船による被害, さらに1999年に発効した新日韓漁業協定をめぐる紛争は竹島問題と漁業問題を連関させることになった。

 

【コメント】 これらの文はこれまで発表した論説に加筆したものである。本書の「あとがき」に記された藤井の基本的な見解はこうである。国際法的にも歴史的にも竹島=独島の領有を日本と韓国が争った時、日本の優位は動かない。日本には次の強力な3枚の持ち札がある。@江戸幕府公認の竹島=独島経営。A1905年、竹島=独島の領土編入と実効支配。Bサンフランシスコ平和条約で竹島=独島は日本の領土に残ることになった。しかし、韓国には持ち札がまったくない。にもかかわらず、韓国は当然のように竹島=独島の不法占拠を続けて平和的解決を求める日本の訴えに耳を貸そうとはしない。

こうした見解は「元禄覚書」や『竹嶋之書附』、太政官の「竹島外一島」版図外指令など、日本に不利な資料をすべて無視し、資料や先行研究を取捨選択した結果である。

 

 

6.【論文】 舩杉力修「領土紛争における地図の証拠能力(1)−韓国側の研究を事例として」

『社会文化論集』14号、2018

本号は、韓国語論文、申珏秀「領土紛争における地図の証拠力―国際判例を中心に」国際法学界論叢49(1981)にそって竹島=独島問題を考える。@領土紛争では紛争当事国が提出した証拠を比較して相対的に優位にある権原を確認することになる。この観点からすると、日本では江戸時代には幕府の許可のもと、竹島=独島で経済活動を行い、1905年は国際法にもとづいて島根県に編入したのに対し、韓国では1905年以前に竹島=独島を実効支配した証拠が一切確認されていないことから日本の優位は明らかである。

A紛争当事国は、自国の領有権主張を正当化したり、または、逆に他方の当事国の領有権主張の不当性を主張するために、地図を掲げて、こうした地図の種類は公式地図から個人地図に至るまで、非常に多様であるが、これらは国際裁判における地図の機能とその基準によって判断される。

地図の機能は、地理的事実に対する認識の基礎資料、および一国の主権的範囲という政治的事実の反映である。地図の基準は、公式性・独創性・正確性・客観性である。韓国では1905年以前に竹島=独島の存在を正確に認識し、また支配していたことを示す地図は1枚もない。一方、日韓で議論になっている「磯竹島略図」の証拠力については次号にて考察する。

PW必要 http://www.kr-jp.net/member/ronbun_cl/funasugi/funa-1809-7.pdf

 

【コメント】 舩杉は、塚本の主張する幕府の「松島(独島)渡海許可」を信じきっているようであるが、これは池内によって否定されて以来、池内に対する反論はない。また、舩杉は朝鮮地図に書かれた于山島はすべて独島ではないと信じきっているようである。かつて、舩杉は島名の比定に際し、遊覧船に乗って欝陵島周辺を現地調査した結果、1900年大韓帝国勅令41号の「石島は観音島である可能性が高いことが明らかとなった」という結論を出したことがある。

 

 

7.【論説】 増田都子「外務省(日本政府)の「竹島」主張はフェイク(嘘)だらけ」

                    『さようなら!福沢諭吉』第5号、2018

私は外務省に電話しました。実は56回、電話したのですが、「竹島」担当者は席を常に外していて、ついに出てきませんでした。電話で応対した、その都度、違う人物に名前を聞いても「名前は名乗らないことになっている」・・・電話をかけ始めてから2週間くらいたった本年411日、やっと以下のQ&Aが成立しました。

Q:外務省ホームページに「竹島の領有」において「わが国は、遅くとも江戸時代初期にあたる17世紀半ばには、竹島の領有権を確立しました」とあるが、どこの藩の領地だったのか? 天領だったのか?

A:どこの藩というわけではなく、ウルルン島への渡海権をもって竹島(独島)を利用していた経緯があり、日常的に(渡海が)行われていたことを踏まえて17世紀半ばには領有権を確立していたと考えられる。

http://www.kr-jp.net/ronbun/msc_ron/masuda-1805fake.pdf

 

【コメント】 内藤正中は、外務省の「竹島」パンフレットの内容に関し、「歴史の一部をご都合主義でつまみ食いして、その一方で、自分の主張と相容れない事実は無視して顧みない」と批判したが、元外交官の佐藤優によれば、そうしたやり方が「外交官の常識」であるという。その常識に面と向かって挑戦するのは大変な労力が必要なようです。

 

 

8.【集会】 記録および案内

8-1. 「明治150年と領土問題」

(1)日時  2018.6.30

 (2)場所  東京、連合会館

 (3)主催  明治150年と竹島・独島を考える集会 実行委員会

 (4)講演  黒田伊彦、久保井規夫

 http://www.kr-jp.net/net-news/dtnews-17.pdf

 

8-2. 【集会】 「竹島問題の早期解決を求める東京集会」

(1)日時  2018.11.21

 (2)場所  東京、憲政記念館

 (3)主催  日本の領土を守るため行動する議員連盟

         竹島・北方領土返還要求運動島根県民会議

 (4)講演  下條正男

 

8-3. 【集会】 「日韓友好と領土問題」

 (1)日時  2018.10.27

 (2)場所  大阪韓国教育院

 (3)主催  「竹島の日」を考え直す会

 (4)講演  久保井規夫

 

8-4. 【集会】第14回「竹島の日」記念式典、竹島・北方領土返還要求運動県民大会

 (1)日時    2019222日(金)13:3015:50

 (2)場所    島根県民会館 中ホール

 (3)主催    島根県/島根県議会/竹島・北方領土返還要求運動島根県民会議

(4)講演    中野徹也、下條正男

 http://www3.pref.shimane.jp/houdou/press.asp?pub_year=2019&pub_month=1&pub_day=10&press_cd=2BF2222E-A8AE-4D06-949C-A80E0A869FA4

 

8-5. 【集会】 「竹島の日」を考え直す会

 (1)日時    201932日(土)

 (2)場所  大阪韓国教育院

 (3)主催  「竹島の日」を考え直す会

 (4)講演  黒田伊彦・久保井規夫

 http://www.kr-jp.net/sympo/s-2019/190302-kangae.pdf

 

○ 竹島=独島問題ネットニュースのバックナンバーは下記で見られます。

 (半月城通信)http://www.han.org/a/half-moon/mokuji.html#net_news