竹島=独島問題ネットニュース 39号
2016.8.21
竹島=独島問題研究ネット
<記事一覧>
1.【書籍】 保坂祐二『〈独島・竹島〉の日韓史』論創社
2.【書評】 朴炳渉「池内敏『竹島-もうひとつの日韓関係史』」
3.【論文】 竹内猛「大韓帝国勅令41号と「石島」の比定問題―『竹島問題100問100答』批判(2)」
4.【論文】 森須和男「天保竹嶋一件顛末」
5.【論文】 舩杉力修「竹島の日本地図についての韓国側の報道・論文に対する反論5-2015年7月17日付韓国・中央日報報道の地図について(2)」
6.【論文】藤井賢二「戦前の竹島・欝陵島間海域におけるサバ延縄漁業試験について」
7.【集会】「「竹島の日」を考え直す集いin東京」
8.【書籍】栗村哲象『竹島は日本固有の島 「隠州視聴合紀」を読んで』
<記事詳細>
1. 【書籍】 保坂祐二『〈独島・竹島〉の日韓史』論創社、2016 (\2,800+税)
日韓友好の長年の課題の一つとして避けて通ることのできない領土問題を、日韓比較政治・比較文化研究家である著者が、19世紀中頃までの日韓の歴史を照らし合わせて韓国側の主張を提示する。
目次
第1章 日韓、どちらの国が先に独島を領土として認識したのか
第2章 高麗・朝鮮時代の鬱陵島と独島
第3章 蓼島・三峰島の捜索と『新増東国輿地勝覧』
第4章 江戸幕府と鬱陵島への渡海免許
第5章 鬱陵島争界
第6章 安龍福の第二次渡日と鬱陵島争界の終焉
第7章 鬱陵島争界以後の鬱陵島と独島
第8章 鬱陵島争界以降の日本地図
2. 【書評】 朴炳渉「池内敏『竹島-もうひとつの日韓関係史』」『獨島研究』20号、2016
表題に記した本は、池内敏が4年前に発刊した論文集『竹島問題とは何か』(前書と称す)を発展させ、かつ一般向けにわかりやすく書いたものである。新しい論考として日韓両国がそれぞれ発行したパンフレットへの批判、「近代日本の海図と水路誌」、1950年代の日韓両国間の領有権論争、「固有の領土」論などが追加された。
今回の本は前書同様、近代前期までは日韓両国ともに独島の領有権を確立したことがないと主張する。日本の場合、元禄竹島一件、天保竹島一件、明治太政官指令によって日本は独島の領有を放棄したという。この論証は中央・地方を問わず幅広い史料にもとづいて展開された。
一方、朝鮮史料の分析は木村幹が指摘したように日本史料のそれに比べると大きな落差があり、問題が多い。中でも官撰書『春官志』の分析は内容の理解のみならず、池内が重視する文献史学のうえからも疑問である。
また、池内は今回もリスクをおかしてサンフランシスコ講和条約など現代史も扱った。前書に対して木村幹が先行研究の検討が不充分であると指摘したが、その批判は今回の著書に充分生かされなかったようである。特に米英共同草案に対しては誤解しているようであり、それにもとづいて導き出された結論は疑問である。
(日本語) http://www.kr-jp.net/ronbun/park/park-1606-ikeJ.pdf
(韓国語) http://www.kr-jp.net/ronbun/park/park-1606-ikeK.pdf
3.【論文】 竹内猛「大韓帝国勅令41号と「石島」の比定問題―『竹島問題100問100答』批判(2)」、『郷土石見』102号、2016
1900年大韓帝国勅令41号に欝島郡の管轄区域として記載された「石島」の比定問題における日本の動向は次のとおり。下條正男はかつて「島項(観音島)」説を主張したが、今回の『100問100答』では自説の根拠を踏襲しなかった。自説を撤回したようである。塚本孝や山崎佳子は新聞記事に書かれた「該島地方」などを「欝島郡」と勝手に解釈し、石島は竹島=独島でないとしていて適切ではない。池内敏は竹島=独島を「石のようだ」とする文献史料がないので同島を石島と呼んだと論じるのは困難と述べるが、『朝鮮水路誌』(1894)には同島を「石のような島」と見た記載がある。同書は勅令における石島の記載に影響を与えた可能性すらある。
資料を総合すれば、勅令の「石島」は(当時の資料には書かれていないが)実在する竹島=独島以外には考えられないという結論になる。
(PW必要) http://www.kr-jp.net/member/ronbun_cl/takeuchi/take-1609-41go.pdf
4.【論文】 森須和男「天保竹嶋一件顛末」『郷土石見』102号、2016/08/12
2002年に発刊した①『八右衛門とその時代』以降に発掘した史料、②『天保撰要類集』、『南撰要類集』、『編年史料仁孝天皇紀』、『対馬宗家文書』を加味して天保竹島一件の顛末を記す。
【コメント】史料②の分析により東京大学所蔵の『竹島渡海一件記』は大坂町奉行所が作成し、評定所へ提出した文書であることが判明した。かつて、著書は①にて「大坂町奉行所では竹島を朝鮮国の持地であると認識せず、無人島とあると思っていた」(p.49)と記したが、同奉行所は竹島・松島を朝鮮領と認識して『竹島渡海一件記』付属の「竹島方角図」を彩色したことが明確になった。
(PW必要) http://www.kr-jp.net/member/media/z-2016/moris-1609.pdf
5.【論文】 舩杉力修「竹島の日本地図についての韓国側の報道・論文に対する反論5-2015年7月17日付韓国・中央日報報道の地図について(2)」『島嶼研究ジャーナル』5巻2号、2016
中央日報の記事「1956年日本政府が作った地図一覧図に「独島」はない」(2015.7.17)に対する反論である。記事は①1946年内務省所属の地理調査所が発行した日本全図「地図一覧図」に独島は描かれていない。②1956年建設省地理調査所発行「地図一覧図」にも独島がない。これはサンフランシスコ講和条約後にも日本政府が独島を自国の領土と認識しなかったことを示しているという内容である。この記事の影響力を考えて今回予定を変えてこれに反論する。
https://www.spf.org/islandstudies/jp/wp/wp-content/uploads/2016/07/5-2_sample_funasugi.pdf
6.【論文】藤井賢二「戦前の竹島・欝陵島間海域におけるサバ延縄漁業試験について」 『島嶼研究ジャーナル』5巻2号、2016
本稿は、1930年代に島根・鳥取両県および朝鮮総督府が行った、竹島・欝陵島間海域でのサバ延縄漁業試験を検討するものである。
https://www.spf.org/islandstudies/jp/wp/wp-content/uploads/2016/07/5-2_sample_fujii.pdf
7.【集会】「「竹島の日」を考え直す集いin東京」
日時:2016.9.10(土) 13:30~16:30
場所:アカデミー千石(文京区千石1-25-3)学習室B
主催:「竹島の日」を考え直す会
参加費:一般は500円
講演:①黒田伊彦「外務省も教科書も触れない竹島・独島の事象を指摘する」
②久保井規夫「日韓に於ける新視点・新史料で竹島=独島の領有権を明晰にする」
http://www.kr-jp.net/sympo/s-2016/1609pamph.pdf
8.【書籍】栗村哲象『竹島は日本固有の島 「隠州視聴合紀」を読んで』
文芸社文庫、2016、\648
一六六七年(寛文七年)出雲藩士斎藤豊仙が著した「隠州視聴合紀」は、「現在の竹島」が「松島」として日本の島であることを明確に記録した我国最古の公的文書とされている。竹島問題を知るために重要なこの文書について、他の教授ら5人の説を紹介しながら不備な点を指摘することによって史的検証を試みる。「隠州視聴合紀」を公正に読み解き、その真正なる解釈の必要性を訴える論文。
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