文書名: 先住民族とは?
[aml 6805],Date: Sun Nov 16 13:44:18 1997
れぷんくるさん、こんばんは。半月城です。
>> 結局、先住民であるかどうかは、単に渡来時期の差だけではないかと考え
>> ています。
>
>この発言には多少の問題があると考えます。現在、「先住民」という用語を用いる
>際には、「本来その地域で主権を持っていた民族が後続に来た民族にその土地を占
>拠され、主権を奪われている」という意味が含まれるからです。ある土地に住み着
>いた時間的な順序だけでは先住民とはいえません。
先住民の意味が時代とともに変化してしまい、特に1993年の「世界の
先住民(族)の国際年」あたりから、先住民の定義はむずかしくなってしまっ
たようです。
れぷんくるさんは、先住民の必要条件に「主権」を入れていますが、これ
は妥当でしょうか? 主権というと国家という概念が前提にあるように思えま
す。この場合、アイヌはまだしもウィルタが国家を形成していたとはすこし考
えにくいように思えます。
先住民をきちんと定義しようとするとかなりむずかしいようです。先住民
の定義は単に学問上の興味だけではなく、現実の政治問題としてきわめて重要
です。れぷんくるさんもご存じでしょうが、日本でも政策決定の際、重要な論
点になりました。
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日本政府は、北海道ウタリ協会が1984年の総会で決議して以来求めて
いるアイヌ民族に関する法律(以下、「アイヌ新法」)制定の障害として、
「『先住民族とは何か、またアイヌがそれに当たるか』『その権利とは何か』
など、最も基本的な論議」から抜け出ていません。
「先住民族の定義や権利が国際的に定まっていないという理由」から「国は
アイヌ民族を少数民族と認めても、先住民族とは認定していない」のです。
(野村義一他「日本の先住民族、アイヌ」部落解放研究所)
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少数民族を先住民として認定すると、先住民としての権利が確定し、場合
によっては民族自決権により分離独立を主張することもありうるので、日本だ
けでなくどこの国でも先住民の定義や認定は慎重なようです。
国連の「権利宣言」をはじめ、最近の動きについて私はあまりフォローし
ていないのですが、このあたりご存じでしたら教えてください。
http://www.han.org/a/half-moon/ (半月城通信)
文書名:先住民の定義
[zainichi:4184],Date: Tue Nov 18 22:22:46 1997
メーリングリスト[aml] からの転載です。ただし、文末に添付した文は、
以前に転載済みですので省略します。
れぷんくるさんは、李修二さんを迎えてのオフミの時、たしか埴原和郎の
二重構造説は少数派であるとおっしゃってましたが、これに異を唱えている研
究者はどのような方でしょうか?。
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>文書名:[aml 6832] RE:SENJUMIN
>Date: Tue Nov 18 21:37:52 1997
半月城です。山崎カヲルさん、古屋哲さん、先住民の定義について紹介あ
りがとうございました。
[aml 6805]で古屋さんが紹介された、上村さんの解説は容易に理解できます。
>先住民族とは近代国家の形成過程で、その土地とともに不当に「国民統合」され
>た民族の子孫によって構成される集団と考えることができる。であるから、「国
>民統合」が不当であったか正当であったか、つまり、「先住民族」なのか「周辺
>少数民族」なのかは、これらの民族の「国家」に対する考え方にあるのであっ
>て、客観性を装った「先住」の時間的問題は二次的であると断言できる。」
この解説を予備知識として、山崎さんが紹介された、国連で採用された暫
定的定義(ホセ・マルティネス・コボによる)を読み直すと、「国連の官僚用
語」もよく理解できました。
以前、私は「先住民であるかどうかは、単に渡来時期の差だけではないか
と考えています」とラフに書きましたが、これは考古学的の観点から書いたも
のでした。ご参考にそのときの原文を下記に転載します。
私はその文を、熱烈な「愛国者」や民族派の多いニフティの会議室FNE
TDに書いたものですが、意外なことに、これに対しコメントは皆無でした。
反論を手ぐすね引いて待っていただけに、すこし拍子抜けでした。
今では、「ヤマト民族は渡来人の血がほとんどである」と書いても、右翼
にとってさして問題にならないのでしょうか。これは埴原和郎氏の二重構造モ
デルがかなり受け入れられてきたためでしょうか。
(埴原和郎「日本人の成り立ち」人文書院、1996)
http://www.han.org/a/half-moon/ (半月城通信)
文書名:半月城通信の紹介本
[aml 6842] OWABI TO OREI
Date: Wed Nov 19 23:04:45 1997
半月城です。今回はおわびとお礼です。
RE:[aml 6839],
>[aml 6832] に半月城さんが私の名前で引用しているくだりは、市民外交センタ
>ーの上村英明さんの「「国際先住民年」とアジア・太平洋の先住民族」(「アジ
>アの先住民族」解放出版・所収)からとられた文章です。
>この問題に関する上村さんの著書には、他に「先住民族」(解放出版)がありま
>す。
私の書き込み、[aml 6832]で原著者の名前を書き落としてしまいました。
古屋さんにはご迷惑をおかけしました。
>いつも「半月城通信」からamlへのアップ記事を読
>ませていただいております。
ありがとうございます。この機会に、ちょっと厚かましく「半月城通信」
の宣伝をしたいと思います。先日、出版社「コスモの本」からだされた本「イ
ンターネット入門以前の超親切教室」(1300YEN)に半月城通信の簡単な紹介
がありました。
この本は題名のとおり、インターネットの超入門書ですが、その中の社会
運動のところで、兵庫区ボランティア、国際的自然保護団体[WWF」と並ん
で半月城通信が写真入りで下記のように簡単に紹介されました。
『人権問題では「半月城通信」というホームページが差別問題、文芸、古
代史等、韓国・朝鮮にかかわる問題について、パソコン通信で議論されたこと
を、テーマ別に編集して掲載しています』
私はこれまで自由主義史観シンパの方などと必死に議論してきましたが、
そうするうちに、ホームページも少しずつ中味がつまってきました。彼らは私
のホームページにとって逆説的にいえば、陰の協力者です。
一方、真の協力者は、[The HAN World] 主宰者の金明秀さんです。ホーム
ページの作成や数十回の更新、さらにサイトの提供などと全面的に面倒をみて
いただいています。この場を借りて、お礼を申し上げたいと思います。
http://www.han.org/a/half-moon/ (半月城通信)
文書名:CTK:国籍条項(アマ無線)
[zainichi:4165] Date: Sun Nov 16 13:59:49 1997
LiuKさん、こんばんは。半月城です。
私も郵政大臣発行の無線従事者免許証を持っています。問題の名前ですが、
「氏名」欄には、漢字で記載されています。また「本籍の都道府県名」欄には
「韓国」と記されています。
私の場合、このような漢字表記で何ら問題はありませんでした。といって
も、これは世の中にまだパソコンがない時代、免許証のコンピュータ処理は
夢のような話でしたので、前例としてあまり役に立たないかもしれません。
しかし、その後、法規が変わったのであれば別ですが、単に役所の事務的
な都合で、外国人の漢字表記が認められなくなったとしたらおかしな話です。
私の前例を全面的に主張したら、あるいは漢字表記は認められるのではないで
しょうか?
それに外国人の身分証明はパスポートか外国人登録証が基本になるのに、
それらと照合不可能なカタカナ表記は疑問です。
ところで、私は免許証(電話級アマチュア無線技士)を電波少年時代にと
りましたが、国籍条項に阻まれ、長い間無用の長物でした。やっとそれを活用
できる時代になりました。
http://www.han.org/a/half-moon/ (半月城通信)
- FNETD MES( 7):情報集積 / 海外政策 97/11/16 -
04832/04832 PFG00017 半月城 「従軍慰安婦」83,櫻井よしこさんのこと
( 7) 97/11/16 14:37 04795へのコメント
苔虫爺さんはじめまして。
#4795、強制連行について
>「恥ずかしながら」存在した事実について「無理からぬことであった」とい
>う、人間らしい情をあの兵隊さんたちとちょっとでも共有できるのなら、
>そっとしておいてください。
苔虫爺さんが「そっとしておきたい」気持ちや、日本の戦争世代が語るに
語れない事情はある程度察しがつきます。その一方で、むりやり「慰安婦」に
させられ、青春どころかその後も苦難の道を余儀なくされた女性たちと「人間
らしい情」をすこしでも共有することを、私は優先させたいと思っています。
こうした考えから、私も櫻井よしこさんをめぐる論議に加わりたいと思い
ます。おりしも、韓国保護条約の議論が一服したところですし、また、この会
議室で私が「従軍慰安婦」について書かないと、さびしがる人がおられるよう
なので、その期待にこたえたいと思います。
報道によると、櫻井よしこさんは「従軍慰安婦」の強制連行と南京大虐殺
について、昨年問題になった講演会でこう語ったようでした(注1)。
「どの資料を見ても軍による(従軍慰安婦の)強制連行はなかった。南京大
虐殺と強制連行の二つの事件は日本の学校では誤って教えられている。先生は
心して語ってほしい」
「日本軍による強制連行はなかった。教科書で(従軍慰安婦の強制連行があ
ったと)教えられる子供はたまったものではない」
櫻井さんが主張されたいのは、<自分が調べた資料の中に「従軍慰安婦」
の暴力的な強制連行はなかった。したがって疑問の多い強制連行を教えるのは
誤りである>ということでしょうか。
上記の発言からすると、櫻井さんは結論を出すのに性急すぎるようです。
そもそも政府資料は容易に公開されないものであり、眠ったままになっている
資料が相当多数あります。
資料の公開について、かって証拠の保管作業にたずさわったとされる苔虫
爺さんのコメント、#4795は意味深長なものがありそうです。
> 残念ながら、30~50年は
>待っていただかざるを得ません。本人あるいは直の係累が物故者となった(なる)
>後でも、それら証拠を直ちに公開するわけにはいきません。史料を扱う公的機関と
>の取り決めでそのようになっているし、また、まだ封印せず預けていないものにつ
>いては、個人が各自保管しています。
この証言の卑近な例が、日本政府が93年7月に行った、韓国「従軍慰安
婦」16人の聞き取り調査結果ではないかと思います。これは櫻井さんも知っ
てのとおり公開されていません。
同じような聞き取り調査を韓国政府も前年に行いましたが、こちらの方は、
名前を伏せるなどプライバシーを配慮して要約したものが公表されました(注
5)。したがって、日本政府が調査結果を公表しないのはプライバシー配慮の
ためではなさそうです。
また資料の公開については前にも書きましたが、上杉聡氏によりますと、
1994年、自治省が新庁舎を建てるため引っ越しを始めたところ、旧内務省
関係資料が積み上げると二万メートルもの量がでてきました。これにはまった
く調査の手が及んでいません(注2)。
こうした資料からは、何が飛び出して来るやらはかりしれません。公表し
たくない資料ほど未整理・未公開にしたがるものです。
他方では未公開資料のみならず、すでに公開された資料からも研究次第で
は重要な資料が発掘されるものです。
その好例が極東軍事裁判資料です。以前紹介したように、この資料からイ
ンドネシアのモア島で日本軍指揮官の陸軍中尉が、現地女性をむりやり「慰安
婦」にした証言が飛び出しました(注3)。
このような資料の発掘は、ジャーナリストの一人や二人の力でできるもの
ではなく、日本全体の研究のなかから生まれるものです。そうした事情は櫻井
さんも承知のはずなのに、ご自分が調べた資料になかったからといって、強制
連行の存在を疑問視するのは、すこし思慮が足りないのではないでしょうか。
#4795,
>藤岡教授がどこかで言われていますね。 「強制連行の証拠」とは、1公文書
>2連行当事者の証言 3目撃者の証言 4強制連行された者の証言 の四通りある
>はずだが、自分はそのどれにも接した事はない。そして、これは桜井よしこ氏も同
>様ですが、その種の証拠を現在ひとつも知らないが、もし仮にそのようなものを自
>分が目にすれば意見を変えます、と。つまり、現時点で「なかった」と断言する根
>拠は(政治的意図は別にして)無いのです。
モア島での強制連行は、藤岡信勝教授の分類では連行当事者の証言、しか
も公文書なのでなので第一級の価値を持つ資料でしょうか。この資料だけみて
も、苔虫爺さんがおっしゃるように『現時点で「なかった」と断言する根拠は
(政治的意図は別にして)無いのです』。
またインドネシアのスマランで起きた<オランダ人「従軍慰安婦」>強制
連行事件も、暴力的な強制連行を証明する第一級の公文書です(注3)。
こうした証拠はたまたま運良く後世に残りましたが、公文書に残らなかっ
た暴力的な強制連行は、インドネシア、中国、フィリッピンなど日本軍占領地
で相当な数にのぼったようです。そこではもちろん「強制連行された者」の証
言や目撃者の証言が数多く存在します。
なかでもフィリッピン「従軍慰安婦」の証言について、「新しい歴史教科
書をつくる会」の賛同人、秦郁彦・千葉大教授ですら「彼女たちの申し立ての
多くは事実を反映していると想像する」と断言しています(注4)。櫻井さん
は、せめてこの秦郁彦氏からでも少し学ぶ必要がありそうです。
上記の事実の中で、櫻井よしこさんはさすがにスマラン事件のことはご存
じのようですが、この慰安所をなぜか強制連行の証明とみていないようです。
これについて、櫻井さんは朝日新聞に次のように投稿しています(97.1.22)。
「同慰安所は開設後二カ月足らずで閉鎖された。理由は「(女性が)自発的
に慰安所で働くという軍本部の許可条件」が満たされていないためだったと記
されている。
このことから二つのことがいえるのではないか。ひとつは軍人が女性たち
を強制して慰安婦にしたこと、もうひとつは女性に売春を強要するのは日本軍
部の統一された方針ではなかったということである。開設後二カ月足らずで慰
安所が閉鎖されたことがそのことを物語っている。
他の資料でも慰安所の設置や監督に軍が関与した事実は出てきても、強制
連行、つまり、女性たちの強制的な募集に軍がかかわったことを示すものは、
私の知る限り、ない」
櫻井さんの主張はどうも矛盾しているようです。軍人が女性たちを強制し
て慰安婦にしたことを認めておきながら、この場合も他の資料の場合も、軍は
強制的な募集にかかわったのではないと主張しています。何とも理解しがたい
話です。
これでは、苔虫爺さんの『「なかった」と強弁するのもコトバでは可能で
すが、根拠の無い理屈にすぎません』というご指摘のとおりではないかと思い
ます。
櫻井さんはご存じかどうか、スマランで皇軍が行った暴力的な強制連行の
ようすは、被害者であるオフェルネさんの証言などにより、あますところなく
明らかにされています(注6)。
それにもかかわらず、彼女はごく最近の著書でも念入りに「現段階では、
日本軍および日本政府が募集の段階から強制をしたという、私が納得できる資
料がない」と強弁しています(注7)。
櫻井さんは、どんなに暴力的な強制連行でも、それが政府・軍中央による
方針でない限り、「日本政府・日本軍による強制連行」といえないと主張して
いるようにみえます。そのためか「従軍慰安婦」問題について「大きな枠組み
として日本政府に責任がある」と断定しても、法に基づいた賠償や謝罪はする
必要はないと考えているようです。
この考えにもとづく限り、櫻井さんが規定する強制連行の資料はあり得な
いと私は考えます。なぜなら日本は、政府や軍中央の方針として、暴力的な強
制連行を指示するはずはないと、私は考えるからです。
ドイツのように自国内の他民族抹殺をもくろんだ政策の場合はともかく、
占領地や植民地など異国を支配するのに、わざわざ住民の反発を招くような暴
力的な強制連行といった愚かな政策は、古代ならいざ知らず近代では採用しな
かっただろうと思います。
したがってモア島事件にせよ、スマラン事件にせよ暴力的な強制連行はす
べて出先の皇軍が暴走した結果引き起こしたものではないかと思います。
つぎに、櫻井さんは法的賠償について「日本政府が強制連行した事実が具
体的に示されるのであるならば、私は日本政府は謝り、賠償もきちっとしてい
くべきだろうと思うし、立たなければならないと思います」と考えておられる
ようですが(注7)、上記のような事件も櫻井さんによれば強制連行ではない
ので、賠償の対象にはならないと主張しています。
この点、国際法ではどうなっているのか紹介します。
1907年のハーグ条約、すなわち「陸戦の法規慣例に関する条約」3条は、
「条項に違反したる交戦当事者は、損害ある時は、これが賠償の責任を負うべ
きものとす。交戦当事者は、その軍隊を組成する人員の一切の行為に責任を負
う」と定め、交戦当事国の損害賠償責任を規定しています。
これについて、専門家は次のように解説しています(注8)。
--------------------------
1899年のハーグ陸戦条約にはこの損害賠償の規定は存在せず、190
7年条約の改正の主要な点はこの損害賠償条項の追加にあった。
この規定は1907年のハーグ敬和会議において、ドイツ代表のファン・
ギュンデルが「もし、法規慣例に関する規則違反によって被害を被った被害者
が、政府に賠償できず、加害者の将校や兵士にしか請求できないとすれば、そ
れは賠償を取得するあらゆる可能性を被害者から奪うに等しい。したがって、
政府は責任から免れてはならない」と発言して規定されたものである。
このハーグ条約3条によって確認された交戦当事国の損害賠償に関する国
際的義務は、交戦当事国が、その軍隊を構成する軍人・軍属その他の者の、
ハーグ規則違反によって生じた損害について賠償の責任を負うことを意味し、
その損害とは、ハーグ規則に違反する行為から生じた個人または財産に対して
もたらされた損害をさす。
--------------------------
このように、軍人の戦争犯罪は、たとえそれが個人的なものであったとし
ても、国際法上、国家には損害賠償責任があるようです。
このハーグ条約は帝国主義国家間の秩序を定めた20世紀初頭の国際法の
なかで、個人の人権にも配慮した数少ない条約のひとつです。これが人権尊重
の立場にたつ現代の国際法の萌芽になったことはいうまでもありません。
被害者の立場にたてば、加害国の政策によるものであれ、個人的な犯罪で
あれ、日本軍に陵辱された事実には変わりなく、当然、補償の請求先は日本政
府に向けられます。
ハーグ条約第3条の被害者に対する加害国の賠償、補償責任はジュネーブ
四条約、ジュネーブ条約の追加議定書でもくり返し定められています。したが
って、当時ハーグ条約を批准していた日本は、同条約第3条により、同条約お
よび付属規則違反について法的に賠償責任を負っています。こうした国際法の
観点も、櫻井さんは見落としているようです。
以上、櫻井さんに対する批判をいろいろ書きましたが、なかには櫻井さん
の意見に同調できる部分もあります。櫻井さんは藤岡信勝氏とちがって、歴史
認識の心構えについてこう語っています。
「戦争中、日本および日本軍が行ったことは、私は全部さらけ出したようが
いいと思います。それ以前の、日本の植民地支配、それにいたる様々な歴史的
経緯など全てにわたって、先述のように日本人が知らなさすぎると考えていま
す。知らないということが最も強い侮辱であり、最も無責任なことだと思いま
すので、日本軍の罪悪を含めて、知らせたほうがいいと思います」(注7)。
この考えから資料公開を強く求めておられるようで、妥当なところです。
最後に櫻井さんには望みたいのは、資料はありきたりの政府資料に限らず、も
っと幅広くインドネシアやフィリッピン「従軍慰安婦」に関する資料なども分
析し、そのうえで結論をだしてほしいということです。
(注2)半月城通信、<「従軍慰安婦」72,吉田証言(2)>
(注3)同上、<「従軍慰安婦」74,インドネシア「慰安婦」(1)>
(注4)同上、<「従軍慰安婦」60,フィリッピン「従軍慰安婦」の強制連行>
(注5)同上、<「従軍慰安婦」2,韓国政府報告書>
(注6)同上、<「従軍慰安婦」5,白馬事件>、
<「従軍慰安婦」32,白馬事件(2)>
NHKTV「50年の沈黙を破って・「慰安婦」にされたオランダ人女性」
(96.8.16)
(注7)櫻井よしこ、金両基「海峡は越えられるか」中央公論社
(注8)青年法律家協会弁護士学者合同部会報告書「歴史に向き合うために」
(注1) 共同通信ニュース速報(96.12.2)
「強制連行はなかった」 桜井さんが講演で発言
従軍慰安婦問題に関連して、ジャーナリストの桜井よしこさんが十月に行った横浜
市教育委員会主催の教員研修の講演で「日本軍による強制連行はなかった。教科書で
(従軍慰安婦の強制連行があったと)教えられる子供はたまったものではない」など
と発言、市民団体の「かながわ人権フォーラム」(会長・弓削達前フェリス女学院大
学長)が市教委に抗議したことを二日、明らかにした。
市教委は「内容については事前に知らなかった。エイズ問題や留学体験を話しても
らうつもりだったが、結果的にお願いした趣旨とは違ってしまった」と話している。
研修は十月三日、市立小中高校の教員の希望者を対象に行われ、約二百人が参加し
た。
桜井さんは「ジャーナリスト桜井よしこが見た日本、学校、子ども」と題して二時
間講演、このうち後半約一時間を日本の戦後の歴史教育に割き「どの資料を見ても軍
による(従軍慰安婦の)強制連行はなかった。南京大虐殺と強制連行の二つの事件は
日本の学校では誤って教えられている。先生は心して語ってほしい」などと述べた。
「かながわ人権フォーラム」は「強制連行は研究者の調査や当事者の多数の証言も
あり、政府も認めている。桜井さんの発言は、元従軍慰安婦に対する冒とく。主催者
の市教委も責任がある」と述べ、強制連行の調査をしている研究者による講演をやり
直すよう申し入れている。
桜井さんは「人権への配慮が足りないとの批判は残念だ。慰安婦の存在を否定する
立場ではないが、強制連行が軍や政府の方針だったのか、という点について事実関係
を中心に提言したつもりだ」とのコメントを発表した。
http://www.han.org/a/half-moon/ (半月城通信)
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半月城の連絡先は half-moon@muj.biglobe.ne.jp です。